斎藤研究室 - 東京工業大学 物質理工学院 応用化学系

ポリシラザンによる複合材料設計

本研究では、有機・無機複合体を合成するために、無機高分子の前駆体であるペルヒドロポリシラザン(PHPS)を用いています。 PHPSは下図のように、全ての側鎖に水素を有する構造をしており、大気中または、水蒸気雰囲気下で加熱するとシリカ膜が得られます。 このときに、触媒の添加と水蒸気を用いた酸化を組み合わせることで、100℃以下という従来よりもはるかに低温で緻密なシリカ膜を合成することが可能となっています。

PHPSのシリカへの転化

また、PHPSは様々な汎用有機溶媒に対し可溶であるため、高分子反応に応用することが容易であるというメリットもあります。 従来では、シリカが有機溶媒に不溶であるために、有機高分子との反応は困難でありましたが、シラザンを用いることで、多様で容易な複合体の合成が期待されています。

PHPSと有機物の複合体

PHPSは活性水素に対して非常に高い反応性を持っています。そこで、鋳型として2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などの、 有機高分子の側鎖に水酸基を有するポリマーを用いてPHPSと反応させています(上図参照)。合成した複合体のモルホロジーは透過型電子顕微鏡などを用いて観察します。 また、熱重量分析(TGA)を用いて耐熱性や熱分解挙動の評価など、種々の物性評価を行っています。ミクロ相分離構造を制御することを目的としています。



ジブロック共重合体のミクロ相分離構造に応じた、複合体のモルホロジーの形成


ポリマーとシリカが層(ラメラ)状に重なっている様子

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